介護・医療

【意欲低下とリハビリ】意欲が低い患者への対応のポイントとは?

臨床場面で「この患者は意欲が低い」と感じたことがある療法士は、少なくないかと思います。

意欲がないからリハが進まない

どうしたら拒否なく介入ができるのだろう

誰しもが一度は、このような悩みを抱えたことがあるでしょう。
では、この時みなさんはどのように対応していますか?

考えられる引き出しが多ければ多いほど、柔軟な対応ができます。

今回は意欲が低い患者に対するリハで、考えるべき視点と対応方法について紹介していきます。

意欲が低いと評価する前に大切なこと

「意欲が低い」と思うのは、療法士側です。
患者は自分のことを「意欲が低い人」と思っているのでしょうか。

意欲が低いという状態について、主観的・客観的に区別して状況把握することが大切です。
そのためには意欲が低いことを患者のみの問題と捉えるのではなく、療法士自身も含めた環境の問題としてまずは捉えてみましょう。

例)

・患者がやりたくないことを、ただ押し付けていないか?

・ベッドのマットレスが柔らかすぎて、起き上がるのが苦痛になっているのではないか?

・リハをおこなう姿を、他の人に見られたくないのではないか?

広い視点で、様々な仮説を立ててみることが重要です。
患者の立場に立った時、少しでも「嫌だな」と感じる要素はないか探ってみましょう。

意欲を左右する神経伝達物質

意欲低下は、抑うつやアパシーにみられやすいとされています。

抑うつとは

気分や思考、意欲が低下し、身体の調子や睡眠にも影響を及ぼす状態。
脳卒中発症患者の約3割が発症すると言われており、私たち療法士にとって抑うつは意外と身近にある。

アパシーとは

自分自身の身の回りのことでさえ、無気力・無関心になってしまう状態。
カウンセリングなど、精神療法が主となる。

引用元はこちらから

抑うつとアパシーとではそれぞれの神経基盤が異なるため、対応方法も違ってきます。

抑うつ:前頭葉病変

意欲が出ないことの自覚があるため、罪悪感を抱き自己嫌悪に陥る可能性がある。

アパシー:大脳基底核病変

意欲低下の自覚はなく、自己嫌悪を抱きにくい傾向にある。

神経伝達物質の異常

抑うつとアパシーは、神経伝達物質の異常がその背景にあるのではないかと考えられています。

抑うつ状態はノルアドレナリンセロトニンの異常、アパシーはドーパミンの異常がそれぞれの起因であるとされています。

これら神経伝達物質の詳細については、緊張をテーマに別の記事にてまとめています。
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考えるべき視点ーバイスティックの7原則ー

バイスティックの7原則とは、信頼関係を築く上で基本となる7つの原則についてまとめたものです。

意欲が低い患者の場合、拒否、非協力的、不満、言い訳など、療法士が期待する反応を得られないことが多いです。

しかしそれらの反応というのは、適切な関係性を築くことで変化していく可能性が大いにあります。
意欲が低い患者に対して何をしたら良いかわからないという人は、まずこの原則を意識した関わりをすることをオススメします。

バイスティックの7原則

原則1:
個別化の原則
患者を個人として捉える(疾患、障害だけを見ない)
原則2:
意図的な感情表出の原則
患者の感情表現を大切にする
原則3:
統制された情緒関与の原則
療法士自身が自分の感情を自覚し吟味する
原則4:
受容の原則
患者のありのままを受け止める
原則5:
非審判的態度の原則
患者を一方的に避難しない
原則6:
自己決定の原則
患者の自己決定を促して尊重する
原則7:
秘密保持の原則
秘密を保持して信頼感を醸成する

個人的には、特に「個別化の原則」と「統制された情緒関与の原則」は療法士において大事ではないかと考えています。

療法士はその専門性のため、病態に基づいた障害の把握に長けています。
しかしその一方で、その人個人として見る視点が抜けてしまう可能性があるため、特に意識したい原則です。

また、統制された情緒関与の原則においては、自分の感情を客観的に見ることが大切になります。
自分が何が得意で、評価をする時に患者の何をまず見る傾向にあるのか。治療手技は何をしがちなのか。
療法士それぞれで得意分野が異なるため、十分に自己理解をし統制をしていくことが必要です。

実際の対応

傾聴と共感

うつ傾向にある患者は、物事を悲観的に捉えてしまい自身も悩んでいることが多いです。
そこで安易に「リハビリしましょう」「運動頑張っていきましょう」などと声かけしてしまうと、逆効果になってしまうことがあります。

傾聴と共感が大切であることはよく知られていますが、ここで重要なことは「専門家として適切な距離を保つ」ことです。

適切な距離を保つことができないと、患者に依存心をもたらし自立支援を妨げてしまいます。
「痛いと訴えるからマッサージをおこなう」「プラットホームに寝かせて身体調整をおこなう」などの選択はどのような効果を期待し、自立支援の中でどの程度必要性のあることなのかを吟味すると良いでしょう。

成功体験への承認

患者の動作が改善してくると、徐々にできることが増えてきます。しかしまだ精神的に不安定な場合では、失敗に対し悲観しやすい時期でもあります。

リハの課題に段階的な難易度を設定し、結果に対しては正のフィードバックをおこない成功体験へと繋げていくことが大切です。

ここで、リハの課題ってどう設定すればいいのか?という疑問が出てくるかと思います。

私が参考にしていたのは「生活行為向上マネジメント』で使用される「興味・関心チェックシート」や「生活行為向上マネジメントシート」です。
生活状況を把握しつつ、患者が何に興味があって何に興味がないのかを包括的に評価できるため、興味に即した課題を見つける一助になります。

詳細は、以下を参考にしていただければと思います。
生活行為向上マネジメント(日本作業療法士協会より)

セロトニンの活性化

意欲にセロトニンが関与していることをは前述しましたが、リハ中にセロトニンを活性化させることは可能です。

セロトニンの活性化には、歩行や呼吸、咀嚼などのリズム運動や日光浴が有効とされています。
特に意欲が低い患者のことを考えた場合、積極的な身体運動の伴わないグルーミング(会話やスキンシップなど)や呼吸を整えることから始めると良いです。

日常生活動作を評価する中で、セロトニンが不活性になっている要素はないか、見ていく視点も大切です。

セロトニンに関しては、以下の記事で詳細を記載しています。

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最後に

意欲が低い状態には様々な原因があり、同じ状況であっても気にする患者もいれば気にしない患者もいます。
改善したと思ったら、次の日にはまた沈んでいることもあるでしょう。

療法士がそこに巻き込まれ自身のメンタルを乱されないように、今回紹介したバイスティックの7原則や適切な距離を意識しつつ、常に最良のリハを提供できるようチームで情報を共有し連携をしていくことも大切です。

最後まで、ご覧いただきありがとうございました。

ABOUT ME
ともぞ〜。
ともぞ〜。
介護支援専門員/理学療法士 病院や施設で高齢者と関わる仕事をしております。 健康が大事と言われておりますが、健康ってなんだろう?そう疑問に感じていました。その健康という言葉を、少しずつ紐解きながら今何ができるのかを考えています。 そういった中で得た経験について、講座という形でまとめています。