介護保険制度には、「利用者本位」「利用者の選択の尊重」という考え方があるため、ケアマネジャーも利用者のニーズに合わせた支援をおこなっていくこととなります。
しかし実際に利用者のニーズを把握しようと思っても、なかなか上手くはいきません。利用者本人がそういった話をしたがらないかもしれないし、家族の思いが強くてなかなか聴取できないかもしれません。
そのような時に利用者の強みと弱みを整理することで、ニーズを明確にするヒントが得られます。
今回は、利用者の持つ強みや弱みとは何かを考え、そこからニーズへ繋げてくことができるようにしていきましょう。
”強み””弱み”を知るメリット
できることは自分でおこなうよう、自立支援の姿勢で関わることができる
個別性のあるケアプランを作ることができる
いざ状況が変わっても、柔軟な対応ができる
利用者の持つ強みと弱みとは?
ケアマネジャーが関わる人は、今の生活に課題を抱え、支援を必要としている人です。そのため、「弱い人」と認識し関わってしまいがちです。
利用者の持つ弱みは、その現状から想像しやすいかもしれません。
しかしその利用者一人ひとりにはそれぞれの人生があり、各々のやり方で困難を乗り越えてきた知恵や方法を持っています。つまり、利用者にはこれまでの人生を生きてきた、自負や自信があるはずです。
それが、利用者の持つ強みになるのではないかと考えています。
このような強みは、利用者の「内的資源」と呼ばれています。
利用者の持つ「自負」や「自信」、「熱望」や「能力」といった思いは、利用者が「こうなりたい!」という感情を引き出すきっかけになります。
ケアマネジャーはアセスメントを通し、その人の強みは何か着目し、利用者自身にそれを気づかせるような働きかけをしていくことも大切です。
強みと弱みの具体例
【強み】
・どのような趣味を持っていて、そこに対してどの程度こだわりがあるのか。
・どのような家庭環境で育ち、これまでどのような役割を持ってきたのか。
・病気や障害はあるのか。それに対して、どのように乗り越えてきたのか。
・社会との繋がりはあるのか。家庭と社会とで何を担っていたのか。
・毎日おこなっていること(食事や排泄、更衣や家事など)に対し、続けたい思いはあるか。
【弱み】
・現状、一人でできず誰かの援助が必要なことは何か。
・経済的な援助が必要な状況か。
・病気や障害に対して、どの程度受容ができているのか。
・悲観的な発言、人生への諦めが聞かれていないか。
客観的事実と、それぞれの思いとを混同せず冷静な分析力が必要です。
これらの強みや弱みを理解するために、ケアマネジャーはより具体的なアセスメントをおこなっていきます。
①身体機能・能力
・痛みの有無と、痛みの部位は?
・どの程度身体を動かせるのか?
・疾患による阻害要因は何か?
・内服薬の有無と、その副作用は?
②日常生活動作能力
・1日の活動時間とその内容は?
・家事等の本人の役割は?
・排泄、入浴、更衣、食事などの遂行能力と要する時間は?
・本人の動線と、その周りの家具や趣向品へのこだわりは?
③人生の生い立ち
・ライフイベントの把握
・家庭や社会での役割と、当時の時代背景の把握
・家族から見た本人の印象は?
④メンタル機能
・自分の人生をどう受け止めているか?
・眠れているか?睡眠薬、向精神薬を使用しているか?
・周りの人とコミュニケーションが取れているか?
・自分の言いたいことを伝えられているか?
上記のように、多角的な視点で分析をおこなうことで、利用者本人の強みや弱みが明確になっていきます。
また、このような対話をしていく中で、利用者自身も自分の強みや弱みに気づくきっかけとなり、何をすれば良いか行動が分かりやすくなることにも繋がります。
・人生を生きてきた自負や自信、それが強みとなる。
・強みと弱みは表裏一体。冷静な分析が必要。
・ケアマネジャーの細かなアセスメントは、利用者の気づきをもたらす。
最後まで、ご覧いただきありがとうございました。